派遣労働、出禁とその後

プシュー!

 

バスから降りる

 

 

どこだここ?

 

 

あたりをキョロキョロしながら

 

スマホを確認する

 

 

「今日の仕事はこの辺だよな、、、?

 

 

1分だか2分だかスマホを操作して

 

首を傾げながら徐に歩いていく

 

 

周りを見渡すと

 

辺りは住宅

 

あるいはマンション

 

あるいはさびれたコンビニ

 

 

住宅街をすすんでいくと

 

 

一際大きい建物に入る

 

 

「、、え?本当にここ?

 

 

そんなことを呟き

 

足は止まる

 

 

白く、大きい建物

 

 

マンションより小さいが

 

何やら看板に〇〇会社とか書いてある

 

 

「まぁいっか

 

 

そんなことを言いながら建物の中に入る

 

 

「おはようございまーす

 

 

知らない場所に入った僕だが

 

そこでとんでもない間に合うことになるのは

この時知らなかった

 

 

 

派遣労働

 

 

なぜ僕がこれをやっているかは

 

単純に生きたいから

 

 

年金

 

光熱費

 

ネット代

 

食費、、、、

 

 

通帳と睨めっこしながら

 

これらの出費を確認していくと

 

 

すでに貯金残高は0に近い

 

 

金、ねえ。

 

 

0になったらどうなるんだろう

 

 

ネットが止まるのか?

 

年金払ってくださいねという通知でもくるのか?

 

 

またはテレビで見る

差し押さえとかくるのか?

 

 

そんな漠然とした恐怖を抱えて

 

タウンワークをめくる

 

 

 

しかし、面接にうからない

 

なぜだろうか?

 

 

食費とか、年金とか、いろいろかかるのですが

 

 

だから面接入らずの派遣労働に行くのは

 

ごく自然の摂理なのかもしれない

 

 

事務所っぽいところの扉を開けると

 

中には制服を着た人が数人

 

 

人100人は入りそうな事務所には

 

半分が机で埋め尽くされ

 

 

その机も半分以上は

 

ファイルだか、書類だから何か知らないが

 

 

紙で埋め尽くされている

 

 

ふと首を左にやると

 

 

貸し出し用の制服を着る男性一人

 

 

僕の仲間だろうか

 

 

「はい、初めての人はそこに名前書いてねー

 

 

誰に話しかけるわけでもなく

 

独り言のように呟く人の声で

 

 

僕は名前を書き、制服を着る

 

 

なれた手つきで服を着る人の真似を着て

 

コロコロローラーを体にコロコロしていく

 

 

そして手を洗ったり

 

手袋をしたりしながら

 

 

仕事場へ向かう

 

 

 

ここへくるのは初めてだ

 

 

当然どこに何があるのか

 

どんな人がいるのか

 

また、どんな仕事をすればいいのか

さっぱりわからない

 

 

「初心者大歓迎!

の文字を見ても

 

 

求人の情報を見ても

 

 

仕事内容がいまいちしっくりこない

まぁ、行けばわかるだろ

 

 

こんな状態で仕事なんて、できるのだろうか

 

 

どうやら食材を取り扱うみたいだか

 

 

リンゴの皮くらいしか剥いたことのない僕に

 

何ができるだろうか、どうしよう

 

 

仕事場に行くと

 

 

僕と同じ

真っ白い服に身を包んだひとが

 

 

散らばって

 

 

何かのケースを転がしていたり

 

または長い機械に集まっていたり

 

 

また、流れていくプラスチックの入れ物を

 

何か触っている

 

 

「あの、今日初めて来たoです!手伝えることはあります!?

 

 

「んー!?今日きた子?じゃあこっち

 

 

高いクシャッとした声からし

おばちゃんだろうか

 

 

真っ白いおばちゃんは

 

 

そう言って手招きも何もすることなく何かの機械に真っ直ぐすすんでいく

 

 

「ここ!カボチャ2個ね

 

「それで!これ!みて!!」とおばちゃん

 

 

差し出したるは何やら1枚の紙切れ

 

透明なボードに挟まっている

 

 

「カボチャは、、、ここね!

この右端に、、向きは互い違いにして、、、

 

 

僕に話しかけているのだろうか?

 

そうしゃべりながら

 

何か説明していく

 

 

向き?右端?

 

 

どうしよう、全部同じに見える

 

 

僕に話していたであろうおばちゃんは

 

 

また白い格好をした人にまた何か話していく

 

 

「ここにおかないとダメだから

 

 

何がダメなんだろうか

 

別に左端でも、向きが違っても

 

 

入っていればいいんじゃ無いだろうか

 

 

というかそもそもカボチャの向きなんて

 

食べる時気にしたことないぞ

 

 

「じゃあ流すよーー!!

 

 

そんな考えはぶっ飛び

 

 

謎のベルトコンベア?

 

シャベルカーのベルトみたいなものが自動で動き

 

 

まめだか入ったプラスチックの容器が

 

僕の前に流れていく

 

 

タッパに入ったカボチャを取り出し

 

2個入れる

 

 

取り出し入れる

 

取り出し入れる

 

取り出し、、、、

 

 

プラスチックの容器は鬩ぎ合い

 

次々と僕の前に流れていく

 

 

2個のつもりが3個取り出し

 

1秒余計に時間がかかる

 

 

2個取り出したつもりが

1つが小さすぎ、カボチャを取り替え

 

 

さらに容器が奥に進んでいく

 

 

手の動きは早くなるが

 

指先の動きは空気を掴んでいく

 

 

「カボチャ追いついてない!

と声

 

 

「止めてー!!

と別の声

 

 

するとずらりと並んだプラスチック容器は

 

動きを止める

 

 

ここぞとばかりにカボチャを入れていく

 

容器の右側だったり、上側だったりしながら

 

 

向きは互い違いだったり、向き合っていたり

 

 

「ねぇ、カボチャ、むき違うよ」と別の声

 

「これはね!こう持って、、、、」と別の声

 

 

あれこれ何か言ってるなお思ったら帰って行き

 

また機械は動き出す

 

 

向きはともかく、早く入れなければ

 

 

とにかく、手を早く動かしていく

 

丸い掌サイズのプラスチック容器が流れていく

 

 

豆の量が多かったり、少なかったり

 

 

?カボチャ以外も問題あるのでは?

 

そう思いながら

 

ただただ手は

 

タッパとプラスチックの容器を往復していた

 

 

「ちょっと止めてーー!!

 

 

また声

 

 

「違うよーカボチャはこう入れるんだよー!

 

 

心臓の鼓動が速くなる

 

 

全身の血管がぎゅっと

縮こまるような、そんな感覚

 

 

そんな感覚に任せて

 

僕は気づいたら軽く飛び跳ねていた

 

 

「えーー!飛び跳ねちゃダメだよ!

なんかこの人変!!

 

 

「報告してくる!

 

 

なんだかそんなことを言って

 

先ほどのおばちゃんはどこかへ歩いて行った

 

 

「流すよーー!

 

 

先ほどと同じく、同じようにカボチャを入れていく

 

 

何だか全部同じに見えてきた

 

手の動きも先ほどよりスムーズになる

 

 

だんだんなれてきた目で

 

次々とカボチャを入れていく

 

 

そんな調子で入れていくと

 

丸いプラスチックの容器が忽然と消える

 

 

「次はね、これ!

と声

 

 

何だか白い人たちが

 

1枚の紙を見て話している

 

 

何だ終わりか

 

 

「ちょっと君!

と声

 

 

振り返るとまた白いひと

 

今度は男性みたいだ

 

 

「はい!なんですか?

と僕

 

 

「君は帰る支度をしてもらって、、、

と男性

 

 

「え、、、

 

 

「、、、もうこれない?

と僕

 

 

「そういうこと、だね

と気弱な声で、男性

 

 

「わかりました、ありがとうございました!

 

 

そう言って僕は颯爽と着替えて

 

またバスに乗った

 

 

どうしてこんなことになったのだろうか

 

 

二度とこの職場に行けなくなってしまった

 

僕が何をしたのだろうか?

 

 

とんでもない不幸だ

 

 

カボチャを入れるのが遅い僕と

 

それだけを気にする人と

 

権力をふるう偉い人と

 

 

全てが悪い方向に噛み合ってしまった

 

 

数々の仕事先で働いたが

 

二度といけなくなった職場はここひとつだ

 

 

あまりにも環境と合わなすぎた結果だろうか?

 

 

通帳にはマイナスで表示される

 

 

年金の文字

 

 

そのあとはこんなことにならないよう

 

きあいを入れた

 

 

そしたら.2つの職場で働けるようになった

 

 

面接なしで、一つの場所にはいけなくなったが

 

面接有りで.2つの職場で働くことができたのだ