フル充電スマホ1つで縄文時代

「んあっ?

 

 

全裸に右手にスマホ一つ

 

 

そこで雑草の上で仰向けに

 

大の字になっていた

 

 

目の前に広がるのは空。

 

晴れてる

 

あれ?昨日ちゃんと布団に入ったよね?

 

 

起き上がり、あたりを見渡す

 

 

ひたすらに広がる、木

 

緑、森

 

 

なんだ?

 

うちの近くにこんな森あったかな

 

 

住宅街のはず、、、?

 

 

何かがおかしい

 

 

「え?

 

 

ふとスマホをつけて時間を確認する

 

12:03

 

 

寝過ぎたかな

 

 

昨日の夜に充電してたおかげで

 

 

100%と、さんぜんと輝いている

 

 

別になんてことはない表示のはずだが

 

ひとつだけ気になることがあった

 

 

圏外

 

 

「ん?料金止められたかな?

 

 

ネットで調べようと

 

Safariを開くが

 

 

インターネットに接続されていません

 

 

「なんだよぉ

 

 

と言って寝転がろうとして

 

立ち上がる

 

 

なんだ、、、?

 

 

というか痒い

 

 

なんだぁ!!

 

 

「うわぁ!!蚊だぁ!!

 

 

そう言って立ち上がるが

 

足にも違和感がある

 

 

スリッパ、ねぇ!!

 

というか服ねえ!!

 

 

「うわ!やばっ!!

 

 

何か変なものを踏まないか気をつけながら

 

 

なんのあてもないまま

 

 

慎重に、一直線に歩いていく

 

 

「なんだ!!人か!?

 

 

全裸で歩いて、1時間ほど

 

 

ただひたすら森、木しかない場所を

 

茂みをかきわけ、進んでいた

 

 

蚊がいるのはもちろん

 

茂みの中の木の枝や

 

謎の突起などで

 

足の皮も擦り切れ

 

血も滲んでる

 

 

ただ、それ以上に

 

自宅で寝てたらいきなり

 

森の中、という異常

 

 

それに本当の意味で気付いてから

 

 

足の怪我なんてどうでも良くなっていた

 

 

手に持つスマホ

 

怪我を治すのには、役に立たなそうだ

 

 

茂みの草を見ても

 

食べていいものなのか、さっぱりわからない

 

 

命の危機を、肌で感じた

 

 

コンビニも、スーパーもない

 

せめて人はいないか、、、、

 

 

祈るような気持ちでただ歩いていた

 

 

そんな中、一人

 

大木の中で何やら佇んでいる

 

 

葉っぱを腰に巻き

 

肌は褐色

 

近くには先に鋭い石がついた棒

 

槍か何かだろうか、、、

 

 

僕が持っているのはスマホのみ

 

武器としては投げるくらいしか役に立たない

 

 

けれど、光は出る!写真は撮れる!

 

何かしらの交渉に使えるかもしれない

 

 

スマホを手放すのは惜しいが、、、、

 

このままだと命が危ない

 

 

単純に、飢え死ぬ

 

 

言葉が通じないかもしれないが、、、、

 

 

そんなこと、木の枝で

 

ズキズキ痛みどうでも良くなっていた

 

 

言葉が通じなくても

 

なんとかならないか!!?

 

 

「こんにちはー!」と僕

 

 

「あ!?オメー誰!?」と謎の男

 

 

謎の男、槍を構える

 

 

「すみません、なんもしないです!!ノー!ノー!!

 

 

僕、スマホを持って手を上げ、首を振る

 

 

「オメーその手のもの落とせ!!

 

 

「くらえぇ!

 

 

スマホの懐中電灯機能をオンにする

 

スマホ、光る

 

 

「はぁ!!なんだぁぁ!!!!」と謎の男

 

 

「オメー!!!〜〜〜!!

 

 

なんだか国のこととか

 

敵のこととか、なんとかまくし立てている

 

 

うわ、すごい

 

 

スマホ光らしただけでこんなに取り乱すんだ

 

別に、当たり前のことなのに

 

 

そんなことを思いながら相手がしゃべり終えるのを待つ

 

 

「オメー!!!!

 

 

突如槍を構えて突っ込む謎の男

 

 

僕、走る

 

 

足、泥だらけ

 

 

木の枝深く食い込み、流血

 

 

右奥歯を食いしばる僕

 

 

歪む顔

 

 

反して加速する足

 

 

謎の男、走る

 

 

しかし、僕との距離は離れていく

 

 

僕、背丈のある茂みに突っ込む

 

 

右脇にそれて、声を殺す

 

 

10匹以上による蚊の襲撃

 

 

しかし、みじろぎせず

 

 

遠ざかる「オメー!!の声

 

 

目の前には茂みの緑

 

 

聞こえなくなる声

 

 

「、、、、、、、なんてことだ

 

 

あたりは暗くなり始めて

 

夕焼けが闇に包まれ始めていた

 

 

 

 

ひかるスマホ

 

 

視界にはスマホの光と、緑色

 

 

充電は10%を下回った

 

 

いまだにゆっくりできる場所すらない

 

 

せめて明かりを消したい

 

 

しかし、それがどうしてもできなかった

 

 

布団で寝てただけ

 

そしたら全裸になるわ

 

足傷だらけになるわ

 

 

あまりにも、理解の範囲を超えている

 

 

頭がどうかしてしまいそうだった

 

 

充電の量なんて、気にも回らない

 

 

ただただ、この光だけが、僕にとって一番信頼できるものだった

 

 

「、、、、死ぬのかな

 

 

すると遠くにスマホの光とは別の光を見つける

 

 

赤く、何やら光っている

 

 

あまりの痛みに、ぼんやりした頭に

 

その光に僕は引き寄せられるように歩いていた

 

 

「ウッホーーー!!!

 

 

ああ、人の声がする

 

 

なんだか楽しそうだ

 

 

スマホを切るのも忘れて

 

ただひたすら歩いていた

 

 

近づくとと目に見える

 

 

大きな火

 

取り囲む20人もの人

 

 

そのうちの大男、僕を指差す

 

 

「光る神、ついに現るうぅぅ!!!

 

 

光る神?

 

ああ、スマホのこと?別に普通だよ

 

 

それよりも充電が3%だ、やばい

 

 

充電が切れたらどうなるんだろ

 

 

さっきみたいに「オメー!!って言われて

 

殺されかけるのかな

 

 

がんばれ、僕のスマホ

 

君が、僕の生命線だ

 

 

何やら、大きな声

 

突如大男、ひざまずく

 

 

そのほかの人、一斉に跪く

 

 

「こんちは」と僕

 

 

大男何やら叫ぶ

 

 

一通り喋り、沈黙

 

 

「足が痛いです

 

 

大男、大声で何やら誰かを呼ぶ

 

瓶を持った人、かけてくる

 

 

瓶の中の液体を足に投げるようにかける

 

 

「それと充電がやばああぁぁぁぁあああ!!!!

 

 

僕、叫び、倒れる

 

 

目に映るのは

 

1%スマホ

 

 

ああ、電池が、、、

 

 

どうなるんだろ、僕

 

 

生きて、スマホ没収か

 

殺されるかなのかな

 

 

スマホ没収されたら何ができるんだ

 

 

というか僕の部屋どこいった

 

充電したい

 

 

コンビニ行きたい

 

お布団欲しい

 

 

僕の生活どこいったんだ??

 

 

というか、充電、やばい

 

 

そんなことを思いながら

 

液体で麻痺していた足の激痛が

 

 

すぐさま脳を直撃して

 

意識がわからなくなる

 

 

 

 

 

 

 

スマホ使いたい

 

 

その思いだけで僕は電気を発明した

 

 

だって友達と連絡取れないじゃないか

 

ゲームできないじゃないか

 

動画見れないじゃないか

 

 

充電切れたら

 

殺されるのかなーっと思ったけど

 

 

毎日お米くれて

 

大男が僕にお辞儀するようになった

 

 

ただ、僕は、スマホ使いたい

 

 

この住民たちが家に使っている

わらから始まった試行錯誤は

 

 

ついにスマホ充電音を鳴らすことになった

 

フォン♪