バカがチョコを受け取った結果。

 

「oくん、これ、チョコ

 

 

そう言って差し出された

 

白い紙袋

 

 

「ん?

 

 

なんか知らんけど女の子からチョコもらった

 

家帰ったら食べよ

 

 

 

 

 

小学3年生

 

 

小さい校庭と、学校

 

 

そこに僕は通っていた

 

 

1/1も終わり

 

正月気分もすっかり抜けてきていた

 

 

登下校の道を

 

背が高い人について歩いていく

 

 

今日の授業はなんだっただろうか

 

 

そんなことを考えながら

 

 

いつもの銀色の大きな門へ

 

 

今日もいつもの授業が始まる

 

 

 

 

 

 

「じゃあ二人一組になってー!

 

 

国語の先生

 

 

男性か、女性かも覚えてないが

 

 

教室を立って見渡す

 

 

いろんな人が入り乱れる中

 

 

友達は友達とどんどんペアを作っていく

 

 

だんだん人が教室でわらわらしているところから

 

半分くらいが先に座り始めた

 

 

友達もいない

 

知らない人と一緒になったらどうしよう

 

 

「oくん?

 

なんだか名前が呼ばれた気がして

 

振り返る

 

 

すると

 

自分よりやや低めの、短髪の女の子

 

 

それから程なくして、僕らは

 

近くの席に座った

 

 

 

 

 

 

y.hさん

 

今でもフルネームで覚えてる

 

 

短髪が特徴的で

 

背はやや低い女の子

 

 

 

 

国語の授業で

 

漢字の部首を取り扱う授業

 

 

周りの班は

 

 

「きへん」だか「さんずい」だか

 

これらの漢字を取り扱っている

 

 

僕とhさんは「つちへん」だ

 

 

 

ルールは至ってシンプル

 

 

 

お互いで一個ずつ漢字を出していき

 

出せなくなったら負けだ

 

 

テーブルの上には1枚の紙

 

僕とhさんの前に1枚の紙

 

 

教室は静まり返っている

 

 

休憩時間のあの騒がしさが

 

嘘のように、先生の合図をまつ

 

 

「はじめ!!

 

 

早速鉛筆を取り

 

 

a4用紙のやや灰色の紙に

 

 

「坂」

 

 

と書く

 

 

続いてhさんも鉛筆を取り

 

 

「場」

 

 

と綺麗な字を書く

 

 

僕の字よりも、小さく、整った字だ

 

 

たいして僕の字は大きくはあるものの

 

一文字書くごとに自体はバラバラだ

 

 

これが汚い字とでも言うのだろうか

 

 

続いて僕も鉛筆を握る

 

 

するとhさんも書いていく

 

 

 

僕は国語は得意な方ではない

 

 

得意なのは算数

 

 

算数の成績は5に対し

 

 

国語の成績は3

 

 

ただ、提出物を出してるだけだ

 

 

彼女はすぐに降参しない

 

もしかしたら国語が得意なのかもしれない

 

 

 

 

左上から書いていた紙は

 

 

11.12個ほど単語が並ぶ

 

 

「うーー、、、

 

 

hさんも唸りながら、閃いたように

 

次の単語を書く

 

 

まいった、お手上げだ

 

 

頭を抱えて考える振りをするが

 

さっぱり浮かばない

 

 

どうしたらいい?

 

負けたくない、女の子に

 

 

「、、、、

 

 

震える手で、鉛筆を取る

 

 

書いた文字は

 

 

「北」

 

 

しかし、左の部分を

 

土にして書いた。

 

 

一か八かの賭けだった。

 

 

指摘されたら終わりだ

 

 

けど、

負けたくない。

 

 

彼女も直前、ずいぶん思い悩んでいた

 

 

ここを乗り切ったら勝てるかもしれない

 

 

僕は彼女より劣る国語力を

 

賭けで乗り切ろうとした

 

 

自分でもわかってる

 

北は、北だって

 

 

だけどやるしかない

 

 

すると

 

 

「、、、、負けたー!

 

 

彼女の方から降参した

 

 

勝った。

 

 

彼女は気づかなかった

 

いや、もしかしたら気付いていたかもしれない

 

 

なんにしろ、形として、僕はこの時勝利を収めた。

 

 

 

 

 

 

「oくん、後で校門に来て」とhさん

 

 

それから程なくして、2/14日

 

 

その通りに、放課後、校門に来た

 

 

するとhさんが紙袋を持って佇んでいる

 

 

「あ、oくん

 

 

「はい、これ、チョコ

 

 

「ん?」と僕

 

 

なんか知らないけどチョコもらった

 

帰ったら食べよう

 

 

恥ずかしいことに

 

この時の僕は

 

 

2/14日に

 

女の子から

 

チョコをもらう

 

 

これが何を意味しているのか

 

一切わからなかったのだ

 

 

ほんっっとうに恥ずかしいことに

 

 

「なんかチョコもらった、美味しそう、帰ったら食べよう

 

 

これくらいしか考えてなかったのが驚きである

 

 

紙袋を受け取ると

 

 

hさんは走って帰ったのか、歩いて帰ったのか覚えてないが

 

 

ともかく帰っていった

 

 

僕ももらって、そのまま家にかえった

 

 

 

 

 

 

そのあとhさんとの関わりはない。

 

 

悲しいことである

 

 

覚えているのは

 

 

手作りのトリュフチョコだったこと

 

お母さんに話したら驚いていたこと

 

そして、チョコはうまかったこと

 

 

あれからもしかしたら3/14日に返したかもしれないが

 

あまり覚えてない

 

 

少なくとも確かなのは

 

 

あのあとのhさんとの絡みは0だったと言うこと

 

 

自分から何か話しかけるわけでもなく

 

hさんのことを気に止めるわけでもなかった

 

 

2/14日の意味を知ったのは

 

また後のことだった