閉店ギリギリで初せどりの話

「じゃあこれとこれとこれと、、、、

 

 

山積みされた段ボール

伝票を一つ一つに貼っていく

 

 

スマホを確認し

 

なぞって

押して

 

 

時たま目を見開き

指を止め、眼球を動かす

 

 

「、、これがこっちの伝票で、こう、です。

 

 

段ボールを回収する店員さん

 

 

カウンターの奥には

僕の荷物には比にならないほど

 

段ボールが積み上げられている

 

 

片手で持てる段ボール

 

また、両手でギリギリ持てる段ボール

 

 

中には1人で持てないような

冷蔵庫が入っていそうな段ボールもある

 

 

5.6段ほど山積みにされたカウンターの奥には目もくれず

 

 

スマホをしきりに動かしていく

 

 

窓の外は暗くなり

お客様も少なくなったホームセンター

 

 

時計は21:00を回っている

 

 

時間がない

後1時間もない

 

 

 

 

何故こんなことになっているのか

それは前日のこと、、、、

 

 

 

「ん?

 

 

スマホをなぞっていると謎の単語を目にする

 

 

テンバイヤー?

なんだそれは

 

 

戦隊ものかなにかか

なんか楽しそうだな

 

 

興味を持ち

スマホをなぞる親指が早くなる

 

 

すると、背筋が凍りつくような文字を目の当たりにする

 

 

そこに書いてあるのは

 

 

テンバイヤーだか戦隊ものだか知らないが

 

彼らに対する誹謗中傷だった

 

 

「なんだこれ?

 

 

どうやら家電量販店などで家電とかを買い

それに金額を上乗せして

Amazonなどで売り出し、お金を稼ぐ方法みたいだ

 

 

「、、、、、、

 

 

絶句した

単純に興味をそそられたものを貶されたような気分だった。

 

 

世間の声、というのだろうか

しかし、僕はその言葉を無視した

 

 

当時僕は集団を怖がっていた

 

 

厳密には

バイトであったり、会社であったり

部活であったり、なんでもいいが

 

 

そこにいる人たちを怖がっていた

 

 

具体的には部活だがそこの人に

なんかいろいろ言われたり、殴られたりしたからだ。

 

 

ただ、それ以上に

アルバイト以外で、自力で稼げる方法が書いてあって興味が湧いた。

 

 

結局好奇心が打ち勝った。

 

 

 

やることは単純

 

買って、上乗せして、売る

 

これだけ。

 

 

ホームセンターがいいとのことで

近くのホームセンターを調べた

 

 

クレジットカードが必要とのことで

クレジットを用意した

 

 

Amazonでのアカウント開設が必要とのことで

Amazonのアカウントも作った。

 

 

はっきり言って、訳がわからない

 

 

ただ

「買って、上乗せして、売る

 

 

これだけなのに

特にAmazonのアカウントに苦労した

 

 

「なんだ?二段階承認?ワンタイムパスワード?なんだそれ?

 

 

僕はただ興味を持っただけだ

バイト以外で稼げる手段があると

 

 

ただ、それだけ

 

 

別にホームセンターなんて

調べたところは一回も行ったことがないし

 

クレジットカードも使ったことないし

 

 

ましてや、Amazonも、ちょっと本を買うくらいだ。

 

 

確かパスワードは

 

「めしうまい

 

的なパスワードだった気がする

 

 

それくらい知識がないのだ

 

 

これだけスマホをなぞったのも

人生で初めてのことかもしれない

 

 

 

なんなんだこれはーーー!!

 

 

 

「これ、なんだ、、、

「うーん?セラーセントラル?

 

 

さぞかしシュールにうつっただろう

 

 

自宅で、一室で

 

何やら叫びながら、呟きながら

 

 

カードを見て

置いて

 

スマホを指でなぞり

 

 

または親指と人差し指で

開いたり、閉じたりしながら

 

 

食い入るようにスマホを見つめるのだから

 

 

 

「うん?

 

 

首を動かす

 

 

なんだ?周り、変

 

 

、、、?なんか暗い

 

 

ような気がする

 

 

気のせいじゃなかった

もう日は沈んでいた。

 

 

どこのホームセンターに

どのクレジットカードを持っていけばいいのかわかった。

 

 

Amazonも、、ひとまずは大丈夫なはず

 

 

用は安い商品を買い

それを高く売るだけ

 

 

布団で横になり、目を閉じた。

 

 

 

駅の中のホームセンターの前に立っていた

 

 

「ここかぁー!

 

 

まだ時計は12時前

 

 

どれくらいの時間もかかるのかわからないので

かなり早めに来た。

 

 

ホームセンターの入り口にたっても

ネットで見たような人は見当たらない

 

 

みんな、無言で歩くだけ。

 

 

「うわっ、ひろー!

 

 

めっちゃでかい

 

 

そもそもホームセンターに来たことすら少なく

どういうものかわからなかったが

 

 

何よりでかい

天井も高い

 

 

なんだここは、幕張メッセか何かか、、、、

それともなんだ、何かのスタジアムか?

 

 

ひとまず、一回りしてみる

 

 

フライパン、化粧品、家具、、、

なんでもある、すげぇ

 

 

そもそもこんなところに来たことすら少なく

やや気持ちが昂ぶったような気がして

 

 

これからお金を使うことを忘れていた

 

 

一通り見て周り、いざ取り出したるは

 

 

手に収まる、黒い四角い箱のようなもの

画面が表示されている

 

 

バーコードをスキャンできる機械だ。

 

 

わかりやすくいうと

これを使うと

 

 

なんの商品が安く

何を買えばいいのかわかるのだ

 

 

しかし、取り出し、手に隠し

ふと立ち止まる

 

 

店員さんに注意されるのでは?

犯罪なのでは?

 

 

声をかけられたらどうしよう

 

 

というかこんなことしてていいのか?

道徳に反しないか?

 

 

というか、赤字になったらどうしよう?

 

 

「、、、、、、、、、、

 

 

周りを見渡しても

ただいろんなお客様が歩き回っているだけだ。

 

 

手が震えている気がする

体が火照り、思うように動かない

 

 

「、、、、、、、、

 

 

僕はそれでも、一つのバーコードに黒い機械を近づけた

 

 

ピッ!!

 

 

ハッとして周りを見る

しかし、誰一人として僕を見ていない

 

 

「、、、、?

 

 

もしかしたら、もしかしたら

僕にも、できるかもしれない

 

 

震えるてで画面を見る

利益はでなさそうな商品だ

 

 

もう、全部、スキャンしてやるか

 

 

 

どんどん商品をみていく

 

 

 

ただただ、無言で、ひたすら棚のバーコードをスキャンしていく

 

 

一番上の棚の左上から腕を伸ばし

 

たなの中頃は中腰になって

 

一番下の棚は屈んで、スキャンしていく

 

 

どんどんとスキャンして

表示を見ていく

 

 

「、、、んっ!?

 

 

なんだこれ

 

 

6000円の商品がAmazonでは8000円で売れるのか

 

 

え?これ?

これ書けばいいの?

 

 

3個あるよ?18000円使うの?僕が?

 

 

頭が小刻みに左右に震える

 

 

一瞬躊躇したが

カゴに全部入れていく

 

 

 

 

 

 

 

「これ、配達で

「配達、ですね

 

 

店員さんもやや戸惑っているように見える

 

 

計10万のお買い物

 

 

「カードで

「承ります

 

 

10万使うのもなかなかない

 

 

籠の中に山積みになった

数々の箱

 

 

今でも覚えてる

 

ステーキのお皿

フライパン

割引されていた水筒

 

 

この時、夏を過ぎ

季節外れになった水筒がセールに出されていた

 

 

結果的にかなりの儲けを出したものだ

 

 

お会計を終えると最後の一仕事

配達がある

 

これをAmazonの倉庫に運ばねば

 

 

ふと時計を見る

もうすでに暗くなっていた

 

 

最後にやるのは

 

 

正しく品を登録して

正しい倉庫に送ることだ

 

 

ただこれに悪戦苦闘することになる

 

 

この鍋は、Amazonで、、、、

 

これか?違うな、、どう検索すればいい?

 

これか?

 

、、、、、違う、これは4個入りのやつだ

2個入りのやつなんだ、買ったのは

 

 

、、、2個入り、、、?

なんだ、登録できない?

そんなことはない、どうやるんだ、、?

 

 

忘我。

時も人も何もかも忘れ

 

 

それがスマホであるかも忘れてのめり込む

 

 

ただどれだけ何もかも忘れても

時計の針は止まらない

 

 

19:00

 

19:01

 

19:03、、、、

 

 

時は忘れつつ

かつ、時に追われて

 

 

ホームセンターの白い壁に寄りかかり

通りすがる人にも目もくれずに操作していく

 

 

早く、早くしなければ、、、

 

 

閉店になったらこの大量の荷物を持って

店外に出ることになる

 

 

そしたらどうなるんだ?

夜をこの荷物と共に過ごすのか

 

 

外で?

 

 

今日は野宿か?ハハッ

寒い夜になりそうだな

 

 

雨が降ったらどうするんだ、、、

それこそ、荷物が全部おじゃんになってしまう

 

 

まるで1万円札10枚が

細切れになって、バラバラになり

 

 

もう二度と、元に戻らないようだ

 

 

早く、早くせねば

 

 

 

 

 

 

気付いたら配達の受付の人と話していた

「これがこの伝票で、これがこれで、、、、

「、、、、、テープがない、、、

 

 

「ガムテープ、貸してください

「はい、、はいどうぞ

 

 

笑顔でガムテープを渡してくれるおばちゃん

 

 

「どうもです!

 

 

テープを貼りながら人の温かみに触れる

 

 

ネットで批判するような人は実際にはいなかった。

 

 

むしろ時間がなく、焦る僕に

手助けしてくれるおばちゃんがいた。

 

 

なんだか夫婦のような安心感があった

 

 

別に夫婦になったことはないけど

なんだかそんなふうに感じたのを覚えている

 

 

やってよかった

 

 

「これで、、、全部です!!

「はーい、お預かりしますねー

 

 

、、、、、、

終わった、、、、、

 

 

 

外に出ると辺りは真っ暗になっていた

 

 

この時間に外に出ることも、なかなかないのではないか

 

 

時間は10時を回った

 

 

最後にコンビニにより

電車で帰路に着いた。

 

 

Amazonに、買った商品を登録して

 

 

 

ps

売り切りました。

 

送料でうん千円とか取られ売り上げはかなり下がりましたが

 

赤字になることもなく今

 

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