リゾートバイト、体験談

ぼんやりとバスの外を見る

 

曲がりくねったまちの外には

 

 

木、緑、森

ただひたすらの木

 

 

街の街路樹はとっくのとうに葉を落として

冷たい風に枝を揺らしているというのに

 

 

この山の木はどれも緑色だ。

 

緑の山の道を

曲がりくねった道を

 

 

どんどんを登っていくバス

 

 

僕はただただ木しか無い外の風景を

珍しそうに見ていた

 

 

見てたのはリゾートバイトなるもの

いろんな場所での求人が載っている

 

 

あるいは海だったり

あるいは山であったり

 

 

海沿いの旅館の求人や

山の上の求人が出ていた

 

 

この世界から抜け出したかった

 

 

バイト中、ふとした時間に雑談を始める

仲間たち

 

この

退屈な日々に

 

 

それに何より

1人の足で立ちたかった

 

 

実家暮らしで働くなか

いつか、どうしても1人で働かなくては行けない時期が来ることは事実であり、明白だ

 

 

自分の部屋をとり、いかねばならない

 

 

「住み込みで働ける場所、ないかな

 

 

そんなことをつぶやきながら

自宅の一室で

 

 

何やら板状の機械を指でなぞっていく

 

 

謎のいたには

いろんな場所の画像が映っている

 

 

海、山

 

 

、、、、これだけなのか?

 

 

見ると今いる場所よりも

うんと、離れた場所

 

 

交通費、、

金、ねえ

 

 

だけど僕は構わず指を動かし続けた

 

 

いや、、まだだ、

この生活は無くなってしまう

 

 

いつの日になるかわからないが

間違いなく

 

 

その前に、、、

 

だから

もしかしたら、、、

 

 

その時写っていたのは

箱根

 

 

箱根?あの箱根か?

 

 

まだ近い

 

 

他のものは

 

 

どこだか覚えてないが

手が出せないような場所ばかりだった

 

 

ここだ。

 

 

調べ、電話番号を見て

早速指で番号を打つ

 

 

 

「、、、、、、、、、

はた、と指が止まる

 

 

 

この時の僕はどうかしていたのかもしれない

突然1人でこんなことやると決めたんだから

 

 

 

「山の中って、、、生活どうすんの?

「実家にいるんだったら別にそれでもいいじゃ無いか

 

 

そんなことを頭巡った。

 

 

しかし心の衝動が、上回った

 

 

 

どんどんと山を駆け上っていく

 

 

 

乗客はまばらで僕も含め3〜4人程度

彼らはどこにいくつもりなんだろうか

 

 

バスの後ろの2人がけのシートの窓際に座り

何をすることもなく外を見ていた

 

 

これからどうなるんだろうか

 

 

遠くなっていくビルだかなんだかを遠目で見ながら

 

 

あまりにも木しかないので

もしかしたら、人なんていないのではと思っていた

 

 

 

「あー、今日から働く子だよー

「ういっすー

 

 

誰だか覚えてないが

支配人みたいな人に案内される

 

 

厨房内

4〜5人の人が動き回り

そこで見たことないような料理を用意していた

 

 

なんだこれは?

 

白、赤、緑の

一円玉くらいの大きさの団子が

 

 

一つの容器の中でひしめき合っている

 

 

なんだこれ、郷土料理か、何かか?

 

 

「じゃあこれ〇〇のテーブルに

 

 

テーブル?

 

 

見るとテーブルを囲む

2〜3人の親子であったり

 

 

若いカップルが

2人用の席に座っていたりする

 

 

覚えたばかりのテーブル番号のところに行って、謎の団子を渡す

 

 

見渡すとそこにあるのは

 

 

複数のテーブルと、イス

 

 

テーブルには何かをを焼くようの

小さい網があった

 

 

そこで僕は何とも言えない感覚を覚えていた

 

 

笑顔のない、丁寧な接客

全く喋らないお客様

 

 

彼らは旅行に来ているはずだ

だったら、、、もうちょっと楽しそうにするものではないだろうか?

 

 

また僕らもそれに応えなくてはならないのではないか?

 

 

まばらなお客様に対してやることがなくなり

説明を受けながら

夜はふけていった

 

 

「はい、これ鍵

「相部屋だから

 

 

そう言って渡される鍵

 

 

仕事場から10分ほど歩いたところにあるのは

どこにでもあるような青いアパート

 

 

ぼろくはなく、新くもない

そこの3回に案内されると

 

 

中は真新しさで溢れていた

 

 

「ここが〇〇くんの部屋ね

 

 

そう言って案内される6畳ほどの部屋

テレビと、ベランダと、敷布団がある

 

 

窓からは途方もない山がだけ見えていた

ビルはない

 

 

案内人がいなくなると

そこで僕は大の字に寝転がった

 

 

知らない場所へのバスでの移動

知らない人との話

知らない仕事内容

 

 

ヘトヘトだった

 

 

目蓋を閉じようと思ったが

留守中の同居人が気になった

 

 

彼はどうやら今病院にいるみたいで

しばらくここを開けているのだ

 

 

忍足で廊下を渡り

そっと部屋を覗く

 

 

2次元キャラのポスターとフィギュアと

閑散とした部屋

 

 

共用のキッチンを覗いてみると

 

 

大量の服、とタンス

彼の持ち物だろうか

 

 

僕の部屋より広いであろうキッチンの

半分以上を占領してる

 

 

透明な箱

子供1人入れそうな箱が

 

 

10個ほど上積みされている

 

 

その中には

大量の上着や下着が入っている

 

 

 

彼にとってここはすでに家のようなものなのだろうか

 

 

僕は身一つと数枚の服しか持ってきていなかった

 

 

僕の部屋は

唯一のコンビニで買ってきた

焼きそばの袋が剥き出しになって置いてあるのと

 

 

服が数枚入ったバッグが一つあるだけだ

 

 

僕は部屋に戻り

コンビニで買った焼きそば素麺を

 

 

器にも入れず

 

温めもせず

 

 

外の山の景色を見ながら

冷たい焼きそばをかじっていた

 

 

ただ、緑の山

浴衣姿のお客様

無表情の仲間たち

小さい、青いアパートと

豊かな同居人

 

 

僕はいろんな思いを抱えて

眠りに落ちた