肉体労働の対立と愛

 

「カーゴ通りまーす!

 

 

春先、桜が散るころ

僕は超重いものを2人で、カゴに入れて

 

ガラガラと運んでいた

 

 

どうして僕がこれを運んでいるのか?

 

 

単純に派遣労働中だからだ

 

 

派遣では面接が入らず

 

働く意思さえあれば

誰でも働ける

 

 

当時働きたくとも

面接で受かる気がしなかった

 

 

パソコンでの仕事なども

面接受けに行ったが

 

 

受からず、また、パソコンの派遣でも

 

仕事がない

 

 

仕方なく誰でも働けるところで働いていた。

 

 

現場には

白の荷台付きのトラックが数台

2mものあるカゴが数十個

 

 

そして

僕と同じ仲間が20人だか、30人だかいる

 

 

僕と同じく、無口で、従順なかれら

 

 

それとトラックの荷台の上に立ち

ヘリに手をかけ

 

 

何やら笑顔で話している

男性2人

 

 

彼らの指示一つで僕らは

右にも、左にも動く

 

 

「はいじゃあこれ2人で持っていってー!!!

 

 

響く轟音

 

僕と仲間1人で籠の左右に立つ

 

 

「せーのー!!

 

僕の声とともに僕らに合わせ

でかいかごもうごく

 

 

何かでっかい建物に入ったかと思うと

 

すでにある複数のカゴ

 

 

「はーーい!!こっちに持ってきてーーー!!

 

 

声に従って仲間と頷き合い

ガラガラと運んでいく

 

 

でかい建物に入った気がする

 

周りを見てみると

学校の体育館のようだ

 

 

いや、もっと広い

だが作りはほぼ同じ

 

 

ステージがあり

壁の色は茶色

バスケットボールのゴールもある

 

 

この体育館の2倍はありそうな広さに

人が10人ほど散らばり

何か話しながらなにかやっている

 

 

あるいはマットをひいたり

あるいは糸を体育館の端から端へ

あるいは雑談中の人

 

 

その中へ適切な場所にこのでっかい籠を運んでいく

 

 

「おーい!!こっち持ってこーーい!!

 

 

動悸が激しくなる

 

どうもここにいると心臓が締め付けられる

ような思いだ。

 

 

「はーーい!!

 

 

声を上げるが

圧倒的に声量が足りない

 

 

「ここ!!ここ!!

指を刺す男性

 

 

ここ?

 

 

その荷物の裏だろうか

手前の方だろうか

また、この指差しはステージの上を指しているのだろうか

 

 

ウロウロしていると

 

「ここだよ!あくしろ!!

 

「はいいぃぃ!

 

 

しかたないからそれっぽいところに置いておく

 

 

「じゃ、次行こ

 

仲間とはなしをしながら次のカゴを取りに行く

 

 

道中僕らと同じ、籠を運ぶ仲間がいる

 

 

すれ違っていると一つのカゴを1人が運んでいた

 

 

籠は重量はゆうに100キロを超えることがある

 

 

運ぶのが大変などころか

下手をすると怪我をする

 

 

例えば車輪を足がひいたりすると、、、最悪だ。

 

 

僕も一回だけあるが

指が腫れ上がり大変なことになった。

 

 

その人うちは歩くのが困難だったほどだし

寝返りを打つときにもやや痛むくらい

 

 

なので1人で運ぶのは危険だ

 

 

「大丈夫ですか?手伝いますよ

 

そういい駆け寄ると

 

 

 

 

「    !!!!!!!!

 

 

 

 

 

襟を後ろから掴まれ後ずさる

 

振り返ると長髪の男性が目配せする

 

 

あたりは2.3秒ほど沈黙に包まれた

 

 

「ほら、こっち、おいで

 

 

すると白いヘルメットをかぶった男性が

手招きをして沈黙を破る

 

 

それを尻目にみんなもそれぞれの仕事へ戻っていった

 

 

後で知ったことだけど

会社を跨ぐと、たまに関わらない方がいい人がいるらしい

 

 

何がきんせんに触れたのかわからないが

怒鳴られただけでよかった

 

 

僕はそれを知らず、助けようとして

返って現場の人に迷惑をかけてしまった

 

 

「、、、、ありがとうございます

 

 

「それじゃ、しばらく一緒に仕事しよう

 

 

彼は白いヘルメットが特徴的に見えた

30だい当たりに見える

 

また、全身黒い作業着に身を包み

正しく、現場の人だ。

 

 

また、特徴的な歩き方をする

一緒に仕事して彼の後をついていくと

 

手は湾曲して垂れ下がり

足はやや横に弧を描きながらほをすすめている

 

 

まるで木造のおもちゃの兵隊がねじ回しであるいていくみたいだ

 

 

「持って、ほらこれ

 

ガムテープみたいなものの先を渡され

 

彼はどんどん遠くに持っていく

 

 

伸びていくテープ

 

 

僕は涙がこみ上げていた

 

 

一瞬の出来事だったが

心臓の締め付けがいちばんつよくなった。

 

 

彼とテープを通しての

共同作業が

 

 

心臓の締め付けを緩めていくように

 

 

最終的に僕はこの派遣労働で9ヶ月働いた

 

 

一番やめようと思った瞬間と

続けてもいいかなと思う瞬間だった。

 

 

白いヘルメットの彼

nさんと言うが

 

 

彼がいなかったらここで仕事を辞めていただろう